Fragile~思い出に変わるまで〜
ポンポンと桜井の肩を叩いて、そのまま通り過ぎようとしたけれど、もう一度振り返って言った。


「浮気じゃないからな?」


あえてそう付け足して釘をさす。


「ほんとですか?」


桜井は怪訝な顔をして自分の席につくと、そう言いながらパソコンを立ち上げた。


その問いには答えずに、俺も自分の席に着く。


椅子にドサッと腰を下ろして軽く目を閉じ、桜井に言った言葉を噛み締めた。


浮気じゃない……


あれは浮気じゃなくて相談を受けただけだ。


帰りに抱き締めてしまったのだって、あくまで藤森にお願いされたからで……


変な意味は全然ない。


ただ彼女を励ましたかっただけ。


それだけだ。


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