彼はクールフェイス☆
お姉さん達、ヒナタの左右の腕にがっちり絡み付き、胸を押し付けて(るように見える。私には!)、強引にどこかに連れていこうとしてるんだもん。
私とのデート…どうするのよ。
あの大人びたお姉さん達には敵わない。
あんなに綺麗でもないし、成熟したボディでヒナタを喜ばせることだって出来ない。
私みたいなタダの女の子より絶対いいって内心思ってるんだよ。
急に悲しくなってきて、その場に立ち止まって俯いた。足元の白いサンダルが、涙で段々歪んで見える。
その時だった。
「遅い」
頭上から聞こえる、大好きな声。反射的に顔を上げるとヒナタが私を見下ろしてる。なんで?
私が涙目になってるのに気付いたみたい。一瞬眉を潜める。
「どうした?」
「だって…ナンパされてたじゃん。あのお姉さん達と比べたら、私なんかカスかゴミだよ」
「…………」
ほら、なにも言い返さない。それって肯定してることになるんだよ?
ヒナタの顔が霞む。涙が溢れそうになる。こんなことくらいで怒って、我ながら馬鹿みたい。
「ばぁか」
「はぁっ?…わっ」
思ってもいなかったヒナタの発言の直後、顔に向かって延びてきたヒナタの手がぐいっと私の目を擦った。
「行くぞ」
繋がれる手と手。
訳わかんないうちにグイグイ引っ張られて、駅を抜け街中へ。
「ヒナタ…ちょっと早い」
「………」
一向に歩く速度は変わらない。息が切れる。
「ちょっ…止まって?」
私の必死の懇願を聞き入れたのか、単に赤信号だったからか…横断歩道の前で、やっと止まってもらえた。
「はぁっ、はぁ…」
でも手は握ったまま。
「きっつ……」
「お前のがいいから」
肩で息をしながらも、ヒナタの声にびっくりして顔を上げる。
「お前のが可愛いと思ってるから」