彼はクールフェイス☆



「うち……ここなの」




白い壁に赤い屋根の我が家の前。



神様のイジワル~!40分ってなんて短いの!至福の時なんてあっという間。




「ここ………」


「?」




傘を持ち上げて、我が家を見上げる小池君。どうしたんだろ。



「ありがとね。おかげで全然濡れないですんだ……あ」




見ると、小池君の肩半分がずぶ濡れ。
そっか、私が濡れないように、傘を余計差し掛けてくれてたんだ。




「ごめん。濡れちゃったね」

「いや……じゃ」




顔色一つ替えず、そのまま行ってしまいそうになる彼を、私は勢いよく取っ捕まえていた。



「待って!うち、寄って行って。濡れた制服乾かそう!」

「!?」



今思えば自宅に誘い込むという超大胆な提案に、小池君は明らかに動揺してる。



「ホント、大丈夫だから…」



目を逸らす彼の腕にギュッてしがみついて、何故か私も必死。
だって風邪引かせたりしたら大変だもん!




「乾燥機入れればすぐ乾くから………ねっ、お願い」




しがみついたまま、見上げて必死にお願いする。



「ね?お願い…」





ガチャッ




「ミュウかい?」

「おばあちゃん!」


突如玄関から顔を覗かせたのは私のおばあちゃん。
89歳の高齢ながら、電車やバスを使ってどこにでも行っちゃうという、パワフル婆ちゃんなの。



「あらあらまぁまぁ、お友達?遠慮はいらないから入りなさい。濡れて風邪引くよ」


そう言いながら、傘をさし杖を片手にヨチヨチ出てくる。



「おばあちゃんダメだよ!この間転んだばっかりでしょ。また膝痛めるよっ……あっ!」



そういった矢先に、濡れた飛び石と、湿ってツルツルになった芝生に足を取られてバランスを崩す。


「危ない!」



私の悲鳴と同時に………小池君が動いた。

まるでスローモーションのように見えた。




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