彼女が変身した事情
◆
-はぁ…眠れなかった-
いつもより早い朝。
鏡に向かって髪をセットする。目が赤い……。ったく、全部アイツのせいだ。
-ピンポーン♪-
なんだ朝っぱらから…
「はい?」
受話器を取る。画面の向こうに写ってるのは……アイツ!?
-ガチャッ-
玄関を開けると……やっぱり。ガバガバの制服に分厚い眼鏡。あれ?髪、今日は結んで無い。艶があるワンレン。なんかいい匂い…シャンプー?………って、馬鹿か俺!
「何か用?」
思わず視線を逸らす。いつもなら女から視線外すことなんかねぇけど、コイツは無理。
「これをお納めください」
手に持ってるのは弁当箱。
「利き手怪我されたなら困ってるかと思いまして。朝食にでも」
「親作ってくれるって思わなかったの?」
「あ、それは昨日引っ越しのご挨拶に来た時、お母様が一人暮らしも同然とおっしゃってたので…」
あんのババァ、余計な事を……。
「サンキュー。でもこんなことしてていいの?そっちの親は?」
きゅっと眼鏡を押し上げる。無表情。
「母はおりません。父も仕事で留守がちなので」
「何やってんの?」
「写真家です。あ、無駄話でした。洗わなくて良いので玄関先に出しててください。では……」
何ごともないように、背を向ける。なんでだろう、自分でもわかんないけど。流れるように揺れる黒髪を掴んでしまった。
ツンと歩みが止まる。
「………何か?」
「あ、名前」
「え?」
「名前聞いてない。奈月……何?」
これが癖なのか、眼鏡を押し上げる。
「……ゆう…。奈月優……」
-ゆう……-
何故かしっくりきた。ほんとは似合わない名前!ってからかうつもりだったのに……。
「じゃ……」
玄関に入って行くのを見送る。
「優!……サンキュー」
聞こえたか聞こえなかったか…そのままパタンと戸が閉まる。
-はぁ…眠れなかった-
いつもより早い朝。
鏡に向かって髪をセットする。目が赤い……。ったく、全部アイツのせいだ。
-ピンポーン♪-
なんだ朝っぱらから…
「はい?」
受話器を取る。画面の向こうに写ってるのは……アイツ!?
-ガチャッ-
玄関を開けると……やっぱり。ガバガバの制服に分厚い眼鏡。あれ?髪、今日は結んで無い。艶があるワンレン。なんかいい匂い…シャンプー?………って、馬鹿か俺!
「何か用?」
思わず視線を逸らす。いつもなら女から視線外すことなんかねぇけど、コイツは無理。
「これをお納めください」
手に持ってるのは弁当箱。
「利き手怪我されたなら困ってるかと思いまして。朝食にでも」
「親作ってくれるって思わなかったの?」
「あ、それは昨日引っ越しのご挨拶に来た時、お母様が一人暮らしも同然とおっしゃってたので…」
あんのババァ、余計な事を……。
「サンキュー。でもこんなことしてていいの?そっちの親は?」
きゅっと眼鏡を押し上げる。無表情。
「母はおりません。父も仕事で留守がちなので」
「何やってんの?」
「写真家です。あ、無駄話でした。洗わなくて良いので玄関先に出しててください。では……」
何ごともないように、背を向ける。なんでだろう、自分でもわかんないけど。流れるように揺れる黒髪を掴んでしまった。
ツンと歩みが止まる。
「………何か?」
「あ、名前」
「え?」
「名前聞いてない。奈月……何?」
これが癖なのか、眼鏡を押し上げる。
「……ゆう…。奈月優……」
-ゆう……-
何故かしっくりきた。ほんとは似合わない名前!ってからかうつもりだったのに……。
「じゃ……」
玄関に入って行くのを見送る。
「優!……サンキュー」
聞こえたか聞こえなかったか…そのままパタンと戸が閉まる。