彼女が変身した事情
ダイニングテーブルの上に弁当を広げてみる。



「へぇ………」



片手でも食べやすいおにぎりとおかず。彩りとバランスがちゃんと考えられてる。
一口食べてみる。



「……うめぇな」



昨日のクッキーを思い出す。あれ作ったの絶対アイツだ。
よく女の手料理は食べるけど、久々にこんなに旨いと思った。




「奈月優か………変なやつ!」




弁当箱、洗わなくていいって言われたけど、それは俺の中で許されない。きちんと洗ってアイツん家の玄関先に置いて来た。


かったるい学校生活。少しは楽しくなるかもな………。







「常磐~。その怪我って一年庇ったからなんだって~?」
「別に………」


「常磐~!………」
「はぁっ……」




あれから一週間。手の怪我の事、幾度となく聞かれる。誰だバラした奴………。



「そんなんじゃねーし。もう治りかけてるからそっとしといて」



聞かれたら取りあえずそう答えることにしてる。めんどうだから。


あれから何故かいくら夜遅くても、必ず家に帰るようになった。理由はアイツ。


あれから顔を合わせる事はまだないけど、朝と夜に必ず玄関先に置いてある食事。和洋中バラエティ豊富で、悔しいけど毎回旨くて感動する。それが楽しみで家に帰ってる気がする。俺ってば何やってんだか……




「良介~。今日合コン付き合えよ」



まぁた真崎からの誘い。はっきり言って合コン行って女引っ掛けるほど不自由してませんから。



「悪りぃけど……」
「頼むよ。S女学院!レベル高いだろ?彼女の友達がお前是非紹介してくれって。頼むよ、顔たてると思って」


そんな両手合わせて頼まれても……。


「会うだけな」
「サンキュー♪じゃ七時にいつもの店な」


真崎と別れて帰路に着く。



「あれ?」


今そこの路地に入って行く数人の人影。うちの制服、その中にブカブカの制服に着られてるアイツの姿があった気がした……。
通り掛かりに覗いて見る。誰もいない。


「気のせいか……」
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