彼女が変身した事情
「部屋………俺使ったら優はどーすんの?」



「おかまいなく。部屋は余ってますので」




薬と水を手渡される。素直に受け取って飲む。



「動いたからまた熱上がってますよ。大人しく寝てくださいね。では………」


部屋から出て行ってしまった。




-アイツに何言ったんだ。俺ってば………-



熱のためか、まだぼーっとしていて思考が追いつかない。


そのうち薬が効き始めウトウトと眠りに引き込まれる。





どの位眠っただろう。気付くとびっしゃり汗をかいていた。




「あち………」




窓の外は真っ黒。また半日くらい眠っていたか……。




-カチャッ-




部屋の戸を開ける。カントリー基調の室内。見回すとダイニングテーブルの前に座ってつっぷしたまま居眠りをしている優。勉強道具を広げたまま。宿題か………。




-嫌がりもしないで看病して…何回も様子見に来てくれたもんな。あんま寝てないんだ…ー




「優?」



自分でもびっくりするくらい優しい声が出た。作り笑いに張り付けた、上辺だけの優しい声じゃなく。




「ん………?」
「ここで寝ると風邪引くぞ?俺が言うのも変だけど」



眠たそうに眼鏡の下に指を入れて目を擦っている。




-やべ………可愛く見えるってどーゆーこと!?-




自分の感覚が信じられない。でもコイツなら作らなくとも、無理しなくとも素の自分を出しても良い気がした。



「11時か…布団で寝ろ。俺汗かいたから家帰って着替えるわ」



ん~………と伸びを一つする。ちょっと小腹が減った気がする。体調戻ったかな。




「お腹減りました?ご飯、食べますか?」
「あ?何でわかんの?」
「お腹擦ってるから」


指で眼鏡を直す。相変わらず無表情。



「食う。優、作って」
「出来てます。暖めるので着替え、してきて下さい」




キッチンに立つ。ふーん………気ぃ利くじゃん。




家に帰ると携帯が光ってる。


「なんだこれ…」


見ると着歴14件…。
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