彼女が変身した事情
3件はクラスの奴、11件は女。残りの一件………



「親父?」



珍しい。普段からほとんど家に帰ってこないし、ここ何年も音沙汰なかったくせに。何の用だ?




「…………………先にシャワー浴びよ」




熱が下がったとなりゃとにかく汗を流したい。頭も洗いたいけど。アイツ怒るだろうな……。


電話は取りあえず後でいいや。






-サッパリした~……-



シャワーを済ませてTシャツにジップアップのニットを羽織る。




隣りの家の玄関を開ける。良い匂い―……



まるで我が家の様に、ごく普通にリビングに行くと既に飯が用意されている。




久々にあったかい飯。メニューは温野菜のサラダとリゾット。




「凄……。優って何でも作れんのな」



遠慮なく頂く。旨い。ちゃんと病み上がりの胃に優しいメニューなのも嬉しい。夢中で食べる。




「あったかい飯出来てるって……こういうのいいよな」
「今までどうしてたんですか?」
「自分でも作るけど、ほとんど外食。1人で食っても旨くねぇし」
「偏食は栄養偏りますよ」



飯食ってる俺の前の席にまるで面接でも受けるみてぇにきちんと座ってる。無表情で。

なんか俺のがくつろいでね?




「旨かった!ごちそーさん」




キッチンで洗い物してる優をカウンター越しに眺める。



-眼鏡、外せば人並みなのに……-



「なぁ」
「なんですか?」
「なんか礼したいんだけど」




動揺するでもなく喜ぶでもなく、黙々と皿洗ってるよ―……。



「そんなのいいです」
「俺の気が済まない。明日日曜日だし、どっか行かね?」
「明日は久しぶりに父に呼び出されてるので無理です」
「あそ……」




ミもフタもねぇ。つうか取り付くシマもねぇ……。


「お腹一杯になったなら早く寝た方がいいですよ?油断禁物です」

洗い物が済み、またテーブルの上に勉強道具を広げる。



「お互いさまだろ。早く寝ろよ」




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