彼女が変身した事情
「冗談に聞こえる?こんな可愛い優、俺だけ知ってればいんだよ」
「からかってるんですか?」



こんな時にも赤くもならず無表情なのを見ると無性に腹が立つ。
つい優の両手を掴むと身体ごと壁に押しつける。



「俺がなんでここにいるか知ってる?」
「………」


眼鏡取り上げたから全然見えてねぇんだろうな。



「俺なんだよ。見合いの相手」
「…………あぁ、そうなんですか」



なんか変に納得した様。じゃ今までなんだと思ってたんだよ…。



「俺も知らないで来たから、最初は親同士の婚約なんか絶対ぶち壊してやると思った。けど、相手が優だって分かってなんか嬉しかった。お前は見えなかったとはいえ、外見関係なく俺に接してきたろ?悔しいけど、初めて女を意識した。
だから優の事可愛いと思っていいの、俺だけだから。だから優も俺の事見てよ……」



大事にしたいから。だからこれ以上触れない。


「……やっぱりからかってるんですか?」
「信じてよ」
「無理です」



はっきりきっぱり。何がそこまでかたくなにさせるのか………。



「分かった」



俺はポケットから例の物を取り出して優の首につけた。華奢なデザインが優の細い首にピッタリだった。



「信じて貰えるまで頑張るし……」



眼鏡をつけてやる。髪ゴムは返さないけどね♪


エレベーターが地上につく。


「まぁ見ててよ。絶対好きにさせてやっからさ♪」








「まずどこ行くかな~」



いつもなら女エスコートすんのも内心嫌々なんだけど。優が楽しめるとこ、喜びそうなことを考えてる。こういうのも新鮮。



「ショッピング?映画?ん~…まだ時間あるし遊園地とか」
「私……一目に晒されるのはあんまり」


こっちを見ず、正面を向いたまま冷静に一言。


-表情がないのがな~……-


今まで一度も優の喜怒哀楽を見た事ない。



「俺は優といれればどこでもいいよ。今日は帰る?」
「はい」
「じゃ歩こうか」



この二人の間の妙な距離もなんとかしねぇとな。


問題は山積みだ―…
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