彼女が変身した事情

「わっ……」
「すいません」


少し歩いては躓き、歩いては人にぶつかる。ったくどんくせぇ…。



「なにやってんだよ」


腕を解くと腰に腕を回させる。そして優の肩を抱く。
身体が密着する分歩きやすいはず。




「これなら歩きやすいだろ」
「恥ずかしいです」
「大丈夫。どっからどーみてもカップルだから♪」



ちょっと強引だったけど…こういう事に関しては100%免疫がない優にはいい練習。俺のムシ除けも兼ねて。



「それでは誤解を招きます」
「誤解じゃねーもん」
「誤解です」



いつかほんとにこういう風に歩ける様になるかな。・・・・暫く無理かもな。








「ほらよ」



マンションに着いてようやく眼鏡を返してやる。

素早くかけるといつものように指で眼鏡を直す。



-………やっぱおばさんだな-



「なぁ、その眼鏡どうにかなんねぇの?」
「どういうことですか?」
「もっとデザイン変えるとかさ……」
「誰に見て欲しい訳じゃないですから」



無表情~。
俺なんか放ったらかしで玄関を開ける。そのまま締め出しくいそうだったから、閉まりそうなドアの隙間に手を差し込む。



「待てって」
「なんでしょうか」
「もう飯持って来なくていい」



優の耳元に口を寄せる。



「こっちに食いに来るからさ」
「……………」
「迷惑?」



優のやつこっちを見ようともしない。



「一人で食べるより旨いだろ。お互い」



優から身体を離す。



「じゃ、夜に」



頭をぽんぽん撫でて戸を閉める。



-入れてくれるか……賭けだな-




自分の家に入る。離れるとまたあいつの顔を見たいと思う。不思議なもんだな…。


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