彼女が変身した事情
茶を啜りながらゆっくりくつろぐ。
こんな時間今までなかった。女ん家行ってもくつろぐ事はなかったし、俺をうちに呼ぶ時点で結局目的は違うとこにある訳だし。ムード作りに飯作られても旨いと思わないし、盛って必死に色気振りまく女を半分義理で半分ヤケクソで抱いてたけど。


-コイツといるとそんなこと考えなくていんだよなー………-



ちまちま食べてる優をず-っと眺めてるのも癒されるというか、ほっとするというか……落ち着くなぁ。


俺が終わったかなり後にやっと食い終わった優。



「旨かった。ごちそーさん」
「あっ、すいません」


自分の皿と優の皿をまとめてキッチンに運ぶ。



「洗うので置いておいてください」
「いや、洗わせてよ。一宿一飯の恩ってやつ?」



ギプスしてるけど、皿くらい洗えんだろ。




「悪かったな。飯作ってくれて、看病までさせて」
「……………いえ」
「何だかんだ言っても嫌がらないで呼びに来てくれて。俺、締め出されんの覚悟してたんだ。優のそういうとこ好き」



ここからじゃ優の背中しか見えない。



「ホント俺との事真剣に考えて」
「常磐さん周りに綺麗な女性沢山いるじゃないですか。私なんか………からかってるとしか思えません」

キッチンを離れて優の前に座る。



「ったく俺が本気だってどうしたら信じてくれんの?」
「……………」




どうしたら優が心を開いてくれるのか。



「………分かった。じゃあ優が不安な要素を消してけばいいんだな」



ポケットから携帯を取り出す。優の目の前で女の子の名前のアドレスを次々削除していく。クラスメイトも全部。これで女の名前は母親だけ。


「ほら。女のメモリーは全部消した」



ぽんと携帯を優の前に置く。



「優以外の女とデートしない。束縛して貰っていいし、ちくいちメールも電話もする。つうか、優携帯は?」
「必要性がないので、持ってません」



はっきり言い放つ。まずそこからか……。


「じゃ持て。買ってやる」




< 28 / 74 >

この作品をシェア

pagetop