彼女が変身した事情
「いらないです」
「それじゃ連絡取りづらいだろ?使い方覚えて俺の携帯チェックしたらいいだろ」
「何の関係もないのに買って貰う訳には……」


優の目の前で親父に電話する。


「あ、俺。優の親父さんの連絡先教えて……」



そして直ぐさま電話。


「良介です。今日はどうも。あの、お願いあるんですけど」



立ち上がる優を手で制す。



「優に携帯買ってもいいっすか?……はい………はい」



-パチン-


「いいってよ。明日買ってやっから」
「…………」




あれ?もしかして困ってんの?
ふと思った。顔は無表情なんだけど……若干首をうなだれてる気がする。



「困らなくてもいーよ?明日は俺だけ行って来る。一緒に歩きたくねーんだろ?徐々に慣れればいいよ」



身を乗り出して頭をぽんぽん撫でる。




-案外無表情って訳でもないかもな。無関心なのはかわんねぇけど-



「さて、と。九時過ぎたけど。優のこれからは?」
「…………勉強です」
「まじめだな」
「今週学力テストがあるんです」
「ふーん」



ちゃっと眼鏡を直す。


「では部屋に行くのでごゆっくり」



-おい、置き去りか~!?-



一人でテレビ見るのもつまんねぇ。うちに居るのと変わんねーじゃん。



取りあえずうちに帰ろうと優のうちの玄関を開ける。


「あ、常盤くん!」
「!!」



絶句。

俺んちの前にはこの前合コンした真崎の彼女の友達が立っていた――………。



「何でここに?」



彼女は凄い嬉しそう。


「会いたいって言ってたって真崎くんに聞いたから。マンションの場所聞いて来ちゃった☆」



あのヤロ………覚えてろ。



「でも常盤くんのお家こっちだよね?留守だから待ってたんだけど。お知り合いの家?」
「あぁ………」



すっと近付いて来て腕に手を回して来る。



「そんなことより……早く入ろ?」




腕に胸を密着させて来る。石鹸の匂い。絶対勘違いしてる。




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