彼女が変身した事情

「慣れるなんて…そんなこと言うなよ。誰だってヤな気持ちなるんだよ。慣れて良い訳ねーんだ」



目の前に広がるプールの水。入れ替えてあるとはいえまだまだ冷たい。

「あっおい。良介！何する……頭の傷…」



－ザッパーン！－



直行の言葉も聞かず、勢い良くプールに飛び込んだ。


まずは赤い財布、次に携帯。ブレザー。



何度潜ってみても眼鏡が見つからない。



「チッ………ダメだな」
「良介」

直行に手を借りて、プールサイドにあがる。もちろん全身ずぶ濡れ。
女子達は自分らが濡れたくない為か近付いて来ない。そんなもんだ。


「常盤さん？どこですか？」



「寄ると濡れるぞ。悪りぃ、眼鏡見つかんねぇ」
「いいですそんなの！また風邪引いちゃう」
手探りで優が近付いてくる。探り当てるとブレザーを脱いでかけてくれ、自分が濡れるのも関係なく、あちこち探りながら一生懸命ハンカチで拭いてくれる。


－ブレザー……逆にかけたの気付いてねぇな－


「おいそこのブス供！」
「えっ、あたしら？」


今までブスなんか言われたことないから一瞬誰のことだか分からなかったよう。三人顔を見合わせる。


「そう、お前ら。なんで優を苛めようと思ったの？何か悪い事した？」
「えっ…悪いことっていうかぁ。ねぇ…」
「ダサくて陰気だし…」
「ムカツクっていうか……」





「よく分かった」
「わっ……」


立ち上がると同時に優を抱き上げる。


「こいつがイケてれば文句ねぇ訳だな」
「ちょっ…常盤さん、下ろして下さいっ」

「周りに何も言わせねぇ。許婚ってのも認めさせてやる」





呆気に取られたギャラリーを置いて優を抱いたまま、さっさと帰宅。（眼鏡が無くて歩けないから）



「あんな約束大丈夫か？」



直行が心配してマンションの下まで送ってくれた。



「俺の許婚をナメるなよ。親父推奨、ダイヤの原石だせ？」
「なにそれ」
「磨けば光るって事」
「つうか2人ともちゃんと傷手当てしろよ？」
「おぉ。サンキュー」