彼女が変身した事情

「だから今回も、また騙されてるんじゃないかって。常盤さん凄く人気なのに私みたいなの好きになる訳が無い。受け入れたらこの関係が『実は嘘だったんだよ』って言われる気がして……怖かった」


今まで淡々と喋ってた優が………目を伏せる。ぽろりと流れる涙。泣いてる……。



「最初は出会った時助けてくれた人が常盤さんだって分かった時、お隣りの家って分かった時、お父さん達が勝手に決めた婚約者が常盤さんて分かった時……」
「うん……」



今まで溜め込んでた感情が涙になって溢れ出す。そんな優を見てるのが堪らなく切ない。




「見掛けに拘らないよって言ってくれたり、それでも可愛いって言ってくれたり、ご飯も美味しいって言ってくれたり………」
「うん………」



「ドキドキする気持ちも、嬉しい気持ちも見ないようにしてたのに…その度に自分の中に好きが積もるんです。その分、裏切られた時に辛いって分かってても」
「俺はいつでも本心だった！」


ギュッときつく抱き締める。俺だって我慢してたんだ。優が心を許すまで、なるべく触れないように………。

でももう限界。可愛くて愛しくてたまんない。こいつは一生俺が守らなきゃ。これ以上傷つかないように………。



「俺だって………身なりがこんなだから女はいくらでも寄ってくる。でも誰も俺の中身を見てくれない。外見に惑わされて勝手に中身想像されて…その通りじゃなきゃ『らしくない』って言われる。ほんとは優しくもねぇし紳士でもねぇ。女エスコートすんのなんか面倒だし、口だって悪い」



なんでこんなこと優に聞かせてんだ。でも俺の中に在るものも全部ぶっちゃけないと優と本当に分かり合えないと思う。



「勉強だって低い点取りゃ『似合わない』。だから悔しくて勉強した。スポーツも苦手な種目があれば『がっかり』。悔しくて人一倍努力した。結果、先輩に妬まれて怪我させられて再起不能で断念。『らしくない』って俺らしい俺ってなんだ。本当の俺ってどんなん？」