彼女が変身した事情
「良介~。やっぱり折れてるわ、可哀相に」
行きつけの病院。顔見知りの女医。昔骨折した時診て貰ってからの付き合い。誘いを断るのも面倒で何回かカラダの関係があった。
「マジ?やってらんねぇ。これじゃ飯食えないから今日泊めてよ、センセ」
「いいわよ。久しぶりに泊まってくれるなら骨折させてくれたコに感謝しなくちゃ♪」
ヤなこと思い出した。アイツ、あの女。すげぇムカツク、そして気になる辺り俺ってば軽くショックなんだろうな。
「ねぇ………手の骨折なら今晩、大丈夫なんでしょ?」
やたらと色気出して谷間とか見せてきやがる。うぜぇ。こういう奴は俺の外見しか求めて無い、絶対。
「ヤダよ。めんどくせぇ」
「え~なにそれぇ」
「嫌なら他あたる」
「なによも~。わかったわよぅ。求めないから家に来て」
じゃ最初っから誘うなっつぅの……。
そうだ。女なんかみんな同じだ。サラッと流して何ごとも無く残りの人生生きればそれで終わり。
◆
「ヤダヤダ常磐~!どうしたのその手!!」「ちょっとね」
学校に来てから何回同じ会話が繰り返されたか。いい加減うんざり。
折れてるわけだからギプスに固定されてる手首。首に吊ると大袈裟でやだからそのままだけど、寄って来る奴来る奴みんなに同じ質問されて軽く流しての繰り返し……。
今朝も女医のマンションを朝イチで出て来た。髪が自分で洗えなかったから、風呂場で洗って貰ったのが運の尽き。結局ヤるハメになった。あの女、どんだけ吸い尽くす気だよ…長居は無用と寝てる隙に脱出して始発で帰ってきたから……眠い。
「真崎。俺サボる」
「なんだよ早く帰ったくせに」
「女んとこ泊まったのが間違いだった」
「あ~……了解」
真崎は皆まで言うなとばかりにちゃっと片手を上げる。結局は俺もこいつと同じ穴のナントカってことか……。
鞄を掴んで屋上に行く。ひと寝してから帰るかな……。
-ガチャッ-
屋上には誰もいない。昼寝するには絶交のチャンス。
入口からは死角にあたる場所を選んで鞄を枕に寝転ぶ。春風が暖かくて気持ちいい…