彼女が変身した事情
「はぁい♪良ちゃ~ん。ご指名どうも☆」
「うっせーな、早く出せよ」
嫌な笑いだな、おい。
「えっ、えっ?この声は……常磐さんのお母様では!?」
そう、俺のお袋。これから何件かハシゴしたいから運転手頼んだんだけど……
本当ならコイツにだけは頼み事したくない。後からからかうネタにされるから。
でも今回は別。優のためなら、背に腹は替えられねーぜ。
「あの、なんでお母様が…」
走り出す車の中、珍しくうろたえ始める優。
手探りで俺の腕を掴むと、不安そうな顔で見上げてくる。
‐ヤッベ…超可愛い‐
見違えるように華やかになった優に、こんな眼差しを向けられたら(本人、全く見えてないけど)どんな男でも絶対イチコロ。
ムカつく。誰にも見せたくねぇ!
「ねぇ常磐さん?」
「あぁ……」
腕を揺すられて、ハッと我に返る。
でも、俺が喋るより一瞬早くお袋の奴が口を挟む。
「この子が噂の良ちゃんのフィアンセね♪祐介から話しは聞いてるわよぉ」
「なんだよ、一回会ってるじゃねーか」
俺のツッコミに、ミラー越しに微笑む。
「あら、分かってるわよぉ?そのドレス、私がこの前置いて行ったものでしょ。ジャストサイズだわね。さすが私♪」
「ちょっと待て。それは俺も聞きたかった。なんでうちにはないサイズ揃えていったんだよ」
「あら~…だって」
なんだその下品な笑いは……。
「絶対良ちゃんの彼女になるのわかってたもの♪」
「……クソ親父とグルか」
なるほどね。知らなかったのは当の俺達だけだったと。
「あの………」
今まで黙ってた優が急に口を挟む。