彼女が変身した事情
「常磐様、いつもごひいきにありがとうございます」
深々と、でも優雅に頭を下げる女店主。
「あらあら、かしこまっちゃって。いつもはそんな事しないくせに~」
「一応よ、一応。だって久々に良介連れて来てくれたんだもの。親しい中にも礼儀ありってね」
クスクス笑うお袋。
それを見てオーナーもにこやかな笑顔を向けている。
お袋より背が高くてスレンダーなんだけど、また違った色気が漂う女性。お袋いわく、商品のデザインから買い付けまでこなすやり手の女社長なんだって。もちろん、デザイン性の高い眼鏡なんかも扱っている。
なんでそんなにこの人に詳しいかって?それもそのはず。この二人、高校からの親友なんだ。
もちろん、他人行儀なあいさつなんか今更って訳。
「で、今日はどんな用事?良介~、五年振りかしら。すっかり男らしくなって♪隣の娘は?彼女?」
俺につかまったまま、視点の定まらない優を見て不思議そうに首を傾げる。
「そ☆良ちゃんのフィアンセなの♪でも眼鏡無くしちゃって……頼んでいいかしら」
「まぁ♪そういうことなら取って置きのをご用意するわ。こちらへどうぞ☆」
「お願いします。あ、コイツほとんど見えてないんで気をつけて」
「はい。丁寧にね♪」
オーナーはクスクス笑いながら優しく優の手を取ると、奥の部屋へと消えて行った。
「さて…と。私はついでに買い物していくわ。良ちゃんもその辺見てたらいいわ」
「ん……」
優を待つ間、何気なく店内をウロウロ。
ふと、ショーケース内のリングに目が行く。
シルバーにゴールドのラインが入った物と、同じデザインでピンクゴールドが入ったペアリング。
‐優に似合いそう…‐
優が不安にならないように、それ以上に俺の物だって周りに認めさせる意味で二人を繋ぐ証が欲しかった。