彼女が変身した事情



「良介、ちょっと……」




程なくして部屋から顔を覗かせたオーナーに呼ばれる。




「はい?」


「彼女ねぇ……眼鏡だけじゃと思って、スタッフにコンタクト用意させたのよ。入れても痛くないようだったから、どう?って鏡見せた途端、部屋の隅にうずくまったまま、動こうとしないのよ。どうしたらいいのかちょっと…」





こそっと耳打ちすると、部屋の中に入るように促された。


そこには壁に向かったまま、べったり床に座り込んだ優の姿。




「優?どうした?」




隣にしゃがんで顔を覗き込む。


途端に、バッと顔を上げた。コンタクトを入れたままだからか、俺の顔が見えるらしい。



「常磐さん……私どうしちゃったんでしょうか。鏡見たら、知らない人が映ってて…私と同じ動きをするんです。私が私じゃないみたい…本当の私はどこに行ってしまったんでしょうか」




怯えてるような、動揺してるようなそんな顔……。
珍しく口数も多い。

‐よっぽど自分の変わりように驚いてんだな‐





優を落ち着かせるように肩に触れると、自分の方に引き寄せる。




「いや、鏡で見たのは紛れも無い本物の優だよ。だから言ったろ、優は可愛いんだって……俺の目に間違いはないってこと」




ゆっくり頭を撫でてやると、眉間にシワを寄せたまま見上げてる。
まだ信用できねぇってか。





「来い」





優の手を引いて立ち上がらせると、鏡の前に連れていく。

並んで立ってる俺達がちゃんとそこに映ってる。





「ほらな。超お似合いだと思わね?並んで歩いても全然おかしくないんだからな。わかったか?」


「…………はい」






ニコリともしない優だったけど、まぁ今はよしとしよう。





「じゃ、続きをお願いします」

「はいはい♪」





事の次第を伺ってたオーナーにバトンタッチ。


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