彼女が変身した事情
「はい?」
キョトンとした顔でこっちを見てる。
「俺達さぁ、付き合ってんじゃねーの?」
「……?あ、はい。多分」
「多分!?ま、いいや。じゃなんで腕組まねーんだよ」
「必要性がないからです。私おかげで視界はバッチリなので」
そんななんで?みたいな顔されて黙ってられる訳がない。
馬鹿真面目な優にはこういう事についても勉強させなきゃねーのかよ。
腕を優の背中に回すと、思いっきり自分の方に引き寄せた。
「きゃ……っ!?」
何の前触れもなく引き寄せられた為に、勢いづいて俺の胸にしこたま鼻を打ったみたいで、涙目になりながら鼻を摩ってる。
そんな優の手を掴むと、そっと鼻に口づける。
「んなっ…ちょっと常磐さん?!」
「常磐さんじゃねーだろ?名前で呼べよ」
「ええっ!」
ビックリして身体を離そうとするけど、さらに力を込めて抱きすくめる。
片腕を背中から腰に回してるから、抵抗出来ないのをいいことに、顎を掴んで上を向かす。
「キスしたい……キスしていい?」
「だっダメです!お母様の前でそんなの…」
「関係ねーよ」
まずはチュッとほっぺに触れる。
「なんで敬語なの?俺達婚約してんだぞ?」
「そんな事言ったって……とにかく離れてっ」
「ヤダ」
今度はおでこにチュッ。
あ~ぁ、こんなにいじめちゃってまぁ……俺ってこんなにSっ気あったんだ。こんなの出せるのは優が初めて。そして優にだけ。
「早く名前で呼んでよ」
「無理です~」
超涙目。可哀相なくらい。でもやめてやんない。
「あ~そう。じゃ」
少しずつ優の唇に近づく。ホントは今すぐめちゃめちゃにしたい…そんな欲望を押さえてんだ。なんて涙ぐましい努力してんだ俺!
唇が触れるか触れないかの瞬間…
「りょ…良介!」
耳をつんざくような悲鳴に近い声。