彼女が変身した事情
可哀相に何かを言いかけてた優は、金魚みたいに口をぱくぱくさせたまま……
あ~ぁ。
「行こ」
あんまシカトすんのも可愛いけど、可哀相で手を取って車から下ろす。
俯いたまま、黙ってついて来る。
「お帰りなさい、オーナー」
「ただいま~。頼んでたものは用意できてる?」
「バッチリです」
俺が頼んでた物も、スタッフに用意させてたらしい。
奥から大きめな箱が二つと紙袋が一つ運ばれてきた。
「取りあえず一通り、用意させたから」
「サンキュー」
優を見ると、まだ浮かない顔で俯いたまま。
「俺らこっから自分達で帰るから」
「えっ!?この後の食事会は?祐介と待ち合わせ…」
「悪りぃけどキャンセル。荷物うちに届けといて」
「ちょっ……良ちゃん!」
「あ、これだけ貰ってく」
「あんたそれ売り物………!」
お袋の返事なんか最後まで聞かずに、パッと優の手を掴むと、強引に店を出る。
引っ張られてるようにしてついて来る優。
「……っくしっ」
どれくらい歩いたか、後ろから聞こえる優のくしゃみに歩みを止める。
「ほら」
店から拝借して来た、ジャケットを着せる。
「これ売り物って…」
「いいんだよ」
素っ気なくそう答えると、ポッケに手を突っ込んで空を見上げる。
薄暗くなった空。
すると……
怖ず怖ずと腕に回される優の手。
ビックリして見下ろすと、ちょっと困ったような顔で眉間に皺寄せちゃって…
「こうするものなんだよね?」
「…………は?」
「付き合うって、私からもこうするものなんでしょう?」
ぎこちない、そうっと重さを感じないような触れ方に、胸がキュンと音を立てる。