彼女が変身した事情
急に頭上から声がしたから、優を含め皆が一斉にこっちを見上げた。
「お前ら…俺の女になにしてんの?」
今まで出したこと無い位低い声。
いくら一年でも、一応俺の顔は知ってるらしい。口々に『うわ…っ、常磐先輩!?』って言ってるし。
「優ちゃん…常磐先輩の女だったんすか?」
「悪い?」
「じゃ…別れてくださいよ」
「はぁ?」
「だって先輩、女に困ってないでしょ?美味しいとこ一人くらい分けてくださいよ」
しゃあしゃあとそんなことを行ってのける一年坊主に、怒りも限界。
結構高さあったけど、ピョンと飛び降りて着地。
無言でぐいっと優の腕を引き寄せる。
ふわりと揺れる柔らかな髪からは男物の香水の香り……
「ごめ…さ…い。常磐さ…」
声にならない声で懇願して見上げてくる優の目には溢れそうな程涙が溜まっていた。
「あのさぁ」
視線を野郎共に向ける。
「コイツ、親公認の許婚なんだわ。卒業したら貰う予定。他の女とは全部手ぇ切ったから、好きにすれば?でもコイツはダメ。何をどう言われてもやれねぇなぁ」
怒り心頭の俺の迫力に負けたのか、はたまた揉めるのが面倒だったのか…『ちぇ~。別にやれる娘探すからいいわ』ってあっさり引き下がって帰って行った。
出て行くのを見送って、優を見下ろすと……震えてる。
「ごめんなさい!ごめ…さ…い…」
ひたすら繰り返しながら。
「なんで優が謝るの?」
「だって…ヤな思いさせてしまったから」
こんなときでも俺のこと優先。
自分のがヤな思いしたくせに。
「優?俺……」
優しく抱きしめたかった。
でも、気持ちとは裏腹に身体は正直とばかりに力を込めて全身で優を抱きすくめる。
「常磐さん?苦し……」
「お前…敬語に戻ってるし」
「あ!」
「お仕置き……」