彼女が変身した事情


「えっ?あの……んっ」





返事なんか聞かない。
腰を引き、指で優の顎を持ち上げて唇を奪う。

苦しそうに身体を反らそうとするけど、それを許さず、そのまま壁に押し付ける。
長いキスが苦手なのはわかってるけど、逃げられないようにわざと。
俺ってホントヤな奴……でもストッパーが外れて押さえが効かない。




だって…





抱きしめてる身体も髪も俺以外の男の臭い。
気分が落ち着く優しい匂いの優が台なし。


何人の男にどんだけ触られたんだ?
優に触れていいのは俺だけだ。



さっきまでの落ち込んだ気分はどこへやら、一旦優をこの腕の中に納めてしまうと独占欲が滲み出てくるのがわかる。

コイツは俺のもんだ。誰にもわたさない……




「んん……っ」





どれ位そうしていたか、ふと反抗していた優の腕の力が抜けた。
それを合図に我に返った俺は、やっと唇を離した。




「ごめん…苦しかったな」




あぁ、また優を苦しめた。
一瞬湧く罪悪感。
こんな強引にキスしたって俺はよくても優は苦しいだけ。



身体を離して、空を見上げる。
後ろから吹き付ける風に抵抗するように髪をかきあげる。




もどかしい。優しくしたいのに、こんなにも大事にしたいのに……



―なにやってんだ俺は……―




気持ちだけ空回り。身体がついて来ない――――





その時だった。






ぎゅっ






抱き着かれる感触に驚いて見下ろすと、俺の腰にしっかり腕を回した優の姿。
そして思いも寄らなかった言葉。



「もっと…」

「えっ…」

「キス……して欲しい」





我が耳を疑った。優が自らキスをねだった?




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