love song
第一章

「ねぇねぇ、昨日発売されたSERINAのCD買った?」
「買った買った、やっぱ良いよね…こう、なんか、切ないんだけど愛おしくて」
「SERINAは表には出ない秘密のヴェールに包まれてて、でも、歌は本当の恋人に向けてるって。今じゃ、音楽界のカリスマ歌姫って言われてるもんね」
「憧れる~!」
「あんな恋したい!」


夕方、ファミレスで1人ご飯を食べていると聞こえる女子高生の話。話題の中心である『SERINA』とはおそらく私の事だ。彼女達が言うように、私はテレビやらライブやら雑誌やら表舞台に立たない為、変装しなくても問題無い。


デビューする時も路上で歌っていたら口コミで広がってスカウトされただけ。条件は顔出しNGで。それが良かったのか悪かったのか…。スタッフも私の事は決まったスタッフしか知らない。他の人は私の事をただのスタッフの一員としか思っていない。


『歌姫』…いつの頃からかそう呼ばれていた。カリスマ性があるかどうかも分からないが、私はそんな事どうでも良かった。私は私と『あの人』の為に歌っているだけ。私がどれほど『あの人』を想っているか、どれほど大事にしているか伝える為…。
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