love song

「ただいま」
誰も居ない部屋に呟くように言い中に入る。最初は寂しかったけど、あの家に帰るよりずっと良い。家に着いたのは夜中の2時。真っ暗な部屋に電気をつけて私は鞄を放り投げてソファーに身を任せた。
「はぁ…雅人ぉ、会いたいよぉ」
クッションに顔を埋めながらだだをこねる子供のように言う。すると、携帯が鳴った。
「こんな時間に何よ」
マネージャーからだった。
「はいはい芹名です」
疲れてます全開で電話に出る。
「はい、はい?え?本当ですか!?はい、分かりました。ラジオなら良いです。有り難う御座います。では、失礼致します」
なんとマネージャーは気を遣ってくれて、明日のミーティングは午前だけにしてくれたらしい。つまり、午後からなら雅人に会いに行ける。


―マネージャー宮田さん有り難う!


私のマネージャーの宮田智は私をスカウトしてきた人だった。なので、事情も知っている。理解もしてくれる。たまに熱くなると周りが見えなくなる人だが私にとってはとても有り難い存在。
明日ミーティングを短くする代わり来週のラジオのゲストに出る事が条件。ラジオならまた帽子を被ってサングラスをすれば問題無い。
やっと雅人に会える。嬉しくて仕方なかった。今から何を着て行くかクローゼットの中を荒らした。水色の長袖ワンピースにベージュのストッキング。鞄はいつもので良い。靴は去年誕生日に雅人からプレゼントしてもらった白いヒール。ちょっと古い格好だが、雅人はそんな所謂清純派が好きだから。明日の準備を完璧にしてから私はベッドに潜り込んだ。楽しみで楽しみでなかなか寝付けなかったが気付いたら意識を飛ばしていた。
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