Star blink of twins
神殿から渡し舟で移動した先に、まるで寄り添うように海に浮かぶ島があった。
ハウェルと妹のレウェルのようにラキストゥア寄り添う島は、ラヴェル島と呼ばれていた。
この小さな島には、神殿に参拝に訪れる信者や、その信者を目当てとした色々な露店、それから地元の漁師たちが行き交う、小さいながらも華やかなところだった。
ハウェルはこうして神殿を抜け出してきては、町の人間や旅行者、露店を営む人々と交流していた。
そうしていると、少しは落ち込んだ気持ちも浮き上がってくる。
慣れた足取りで大通りを歩いていると、すれ違う人たちに何度も声を掛けられる。
それでも皆、ハウェルが個人的に通りを歩いているのがわかっているのか、決して邪魔をしようとはしない。
賑やかな商いの声に混じり、悲鳴が聞こえたのはそんなときだった。
「―……!」
この地方のものではない言葉に、通りを歩く人々が何事かと視線を送る。
その先には、褐色の肌に金髪、黒檀の様な瞳の少年と少女がいた。
周りを取り囲む男たちは、ハウェルや島の人間と同じく色素の薄い者たち。
囲まれている少年と少女は、この島の人間ではない。
「ちょっと、通してくれ…」
野次馬の波をかき分けてハウェルは進む。
この島で揉め事が起こることは、珍しいことだった。
褐色の二人組みのうち少女の方が、男の一人に羽交い絞めにされているところを見ると―…どうやら悲鳴はこの少女のものらしかった。
褐色の肌の少年の方は、腰に携えた湾曲刀を抜く事を躊躇っているのか、男たちを睨み付けたまま動けずに居た。
「おい、二人とも顔には傷をつけるなよ!ベザフ人の奴隷は珍しいからよく売れるんだ」