脱力系彼氏
 いたいた! 窓際の、後ろから3番目の席。

だるそうにパンに齧り付いてる。パンを食べるのも、面倒臭いのかな?


ドアを開けて、昇ちゃんの教室に入る。
そっと近付くと、昇ちゃんは眠そうな目をこちらに向けた。

「昇ちゃん、寝てたの?」

「おー」

顎を動かす速度まで、遅い。

あたしが呆れ笑うのを見て、昇ちゃんの後ろにいたチャラそうな男の子が、ニヤニヤしながら立ち上がった。

多分、佐藤君。
そんな感じの甘そうな顔だ。

「綾ちゃん、ここ座りなよ? 邪魔者は消えるからさ」

気が利くじゃん、佐藤!

思わずガッツポーズしそうになるのを抑えて、できる限りの笑顔を作った。

「ありがとう」

佐藤君は満足そうに「どーも」と言って、ニヤニヤしながら昇ちゃんに目配せして、去って行った。言われた通り、あたしは後ろの席に腰掛ける。

「ね、昇ちゃん」

昇ちゃんは口をゆっくり動かしながら、視線を少しだけあたしの方に向けた。

「今日、14日って覚えてた?」

昇ちゃんは目を逸らして低い声を出した。

「……おー」


……覚えてたんだ。

嬉しくて、自然と口許が緩んでしまう。

ちょっとは進展できてるのかな、なんて勘違い、してしまう。



でもそれは、


本当に勘違いで……



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