脱力系彼氏
 すっかり暗みの増した空に、眩しいくらいチカチカ点灯している電飾。月が出ていないのにこんなに明るいのは、やっぱりネオンのせいなのかな。

もう0時は過ぎているのに、道路からは頻繁に、クラクションの音が聞こえるし、人通りも昼に負けず劣らず、多い。

眠らない町だと言われているロサンゼルスがこれ以上だと言うなら、一体どんな感じなのだろう、とどうでもいい疑問が頭を通り過ぎていった。


ホストの勧誘。援助交際のお誘い。キャッチ。不純な街が、うるさいくらい話しかけてくる。



なのに、うるさくない。

こんなうるさい場所にいて、こんな眩しい場所にいるのに、全然楽しくない。何も耳に入ってこないし、光も色がないように映る。


今のあたし、心が空っぽだ。

せっかく冴子が元気づけてくれたのに。


だって、こんなネオンの景色よりも、昇ちゃんと見た月の方が、何倍も明るくて、優しかった。車の音や雑音よりも、昇ちゃんといる時のあたしの胸の方が、何倍も騒がしい。



……ダメだ。あたし、昇ちゃんから離れられないよ。


ぼんやりした意識の中、目が覚めるような大きな音がした。
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