恋愛流星群
「アトマイザーだよ、香水を持ち運べるの。煙草の匂い、消してあげる」
そう言って俺の首元にそれを吹き掛ける。先程感じたのと同じ、甘い香りがそこから漂ってくる。
女の子らしい、それでもどこか落ち着く香り。
「……ちょっと待て! これは煙草の匂いよりやばいだろ!」
我に返ってそう言う俺に、悪戯っぽく笑って見せる高原。
その顔には「わざとだよ!」と書いてある。
再び立ち上がり、スカートを払うと、彼女は走ってこの場を離れる。
少し離れたところで立ち止まり、振り返ったかと思うと、大きめの声で言葉を発した。
「伊藤先生、さようならっ!」