恋愛流星群

 俺が高原佳代の存在を初めて意識したのは、まだ夏休みも迎えない6月のことだった。

 担任に頼まれて、クラスの戸締まりに向かったとき、もう誰もいないはずの教室に、電気が付いているのを見付けた。
 消し忘れか。そう思って中に入ると、教室の真ん中の席で突っ伏して眠りこける女子生徒が一人。

 その女子生徒こそ、高原佳代だった。

「おい、高原?」

 呼び掛けてみるも、返事はない。完全に熟睡しているようだった。
 肩を揺さぶって漸く目を覚ました高原は、寝ぼけ眼で俺を見る。

「伊藤、せんせ……?」
< 72 / 83 >

この作品をシェア

pagetop