天を衝く槍
そんな話がようやく収まった後、ジル達は食堂に向かって歩き出した。
「よぉっしゃぁぁあ!!!」
ギルが健康診断の結果が書かれた紙を見て叫ぶ。
「今年も異常無し!俺、健康!そして、今年こそジルを抜く!」
そんなギルの声がここまで聞こえる。
「抜くって…何を?」
私は隣にいるアルに聞いた。
「身長」
彼女はこれは毎年言っていることなのだと付け足して、ついてくるよう促す。
「ま、抜くことより身長すら伸びてないしね」
「………………」
アルのその言葉に私は苦笑しか出来なかった。
そして踊り場に着くと、彼女は自分の健康診断表を見た。
つられて私も見る。
「げ…」
それをじっくり見て、私は驚愕とした顔を私ざるを得なかった。
「どーしたー?」
アルはキョトンとした表情を見せ、頭の上にクエスチョンマークを乗せた。
「た…体重が……増え…」
「ここに来たらそんなもんよ」
「え」
彼女は、筋肉とかつくからとつけ足し、私の体脂肪の数値を指差した。
「あ、減ってる」
「だから、気にすることないと思う」
アルはそう言い、笑った。
やったー!
そして私がお礼を言おうと立ち上がった時、健康診断表を手にした白衣を着た人とシロさんが中庭に行く姿が目に入った。
二人の空気はどこか張り詰めているようだった。
「…………………」
何かあったんだろうか。
もしかして、彼は病気になったのだろうか。
「……コウガ?」
私が急に立ち上がって一点を見ている私を不思議に思ったのか、アルは私の名を呼んで私の視線の先にあるものを見た。
「…………………」
そしてアルは、ここから医師とシロさんがいなくなって、回りに人がいないのを確認して言う。
「コウガってほんとにシローが好きなの?」
「オゥッ!!?」
おっと思わず変な声が出ていってしまった。
そして慌てて口を塞ぐ。
じゃなくて。
「なんで!!?なんでそう思うんです!!?」
うっそ、私そんな素振り見せてた!!?
そう言う私の顔はきっと真っ赤だ。
図星ではないけれど、直球でそう言われると恥ずかしい。
「え、ちょま、近い近い」
いつの間にかアルに詰め寄っていた私は、慌ててささっと身を引いた。
「俺のアルになにしてやがるーっ」
「「!!?」」
急に声がした方を見ると、何故かジルが叫びながら走ってきていた。
……いや、本当に何故?
さっきギルとヨースケと一緒に食堂に行っていたではないか。
……実はハブかれてるのだろうか。
いやそれはないか。
「バカは帰れよ…」
なんて思っていると、アルがげんなりした顔で呟いた。