天を衝く槍
アルがジルの腹に肘鉄砲を喰らわせ、彼が痛がっている間にサササッとベンチから降りてジルと距離をとる。
「て、てめ…アル……」
「ジルが悪いんだからなっ。あんなん息がかかってくすぐったいしエロいだろ!」
顔を赤らめたままのアルが目を落として言い、それを聞いたジルはキョトンとした。
「いっつもあんな感じだろー?あ、なんならここでするか?」
ジルの発言を聞いた途端にアルの顔から赤みが消えた。
「……………………」
「……なんでそんな呆れた顔して見るんだよ?しかも冗談だし」
ジルは頬を膨らまして拗ねる。
「はぁぁぁぁあ…」
「え、ちょ、ナニそのため息」
「もし、あたしのダンナさんがジルだったら、あたしの子供が哀れで仕方ないな………」
彼女は呆れたような声音でかぶりをふった。
「……え…?あ、アル!!!やっと俺らに子供出来たのか!!?」
「んなわけねーだろ」
ジルの言葉に対して、アルは速攻で吐き捨てる。
「だよなー。俺もそろそろかなって思ってたんだよ」
「…噛み合ってねぇ……。つか、そんな目をキラキラさせんな」
「あんなにしたのに出来てねぇわけないもんな~」
「聞けィイ!!!」
何のことか分かったアルは再び顔を真っ赤にさせ、叫んだ。
それを聞いたジルはお約束事のように頬を膨らます。
「えー…さっき『あたしの子供が云々』って言ったじゃん。てことは、やっぱできたんだろ?」
「出来てねェよ。最初に『もし』って言ったろ」
するとジルの顔からサーッと血の気が引いていくように固まる。
「え…アル、お前浮気してんの?」
「……一体どうやったらそんな考えに至るんだy」
「俺らの子供じゃないんなら、それしか考えれねぇだろ」
彼がアルの言葉を遮って、眉をひそめる。
そんなジルの目が冷たい。
「え、イヤ、違u」
「まさかお前が浮気するとは思ってもなかったわ」
「ちょ、ジル、ちがu」
「あー…俺、今まで何してたんだろ」
げんなりしたようにジルがしゃがみ、聞けよ!!!と、アルが彼の髪を触ろうとするが、彼は彼女の手をパシンとはたいた。
「っせーなぁ…言い訳なんか聞く気になんねぇよ」
ジルの声のトーンが低くなる。
そして彼は、立ち上がって中庭を去ろうと足を動かした。
それをアルがジルの背中に抱きつき、彼の動きを止める。
「浮気してねェよ。誰とも」
「…………………」
「……する気にもなんねェよ」
「なんで?」
ジルが振り返り、冷めた目でアルの方を見て言った。
「え」
それを聞いた彼女は、どう言おうか迷っているようだ。
目が泳いでいる。
「…ねぇ、なんで?」
ジルが再び聞くと、彼女は意を決したように彼を見上げた。
「ジルを愛してるからに決まってんだろーが、バーカっ」