天を衝く槍
「!」
シロさんが何かに気づいたように急に立ち止まった。
フツーに駆けてた私とダラナが慌てて止まると、風に背中を押された。
「来るよ」
彼は正面をじっと見ながら言い、音もなくサッと鞘から刃を取り出した。
それとほぼ同じくらいだろうか。
四方八方から迫ってくる風の音とウサギの気配がした。
すぐさま私とダラナの二人で背中合わせになり、私は隣で胸を踊らせている彼女に短く、構えてと言う。
すると彼女は大鎌を握りしめて緊張した面持ちで一点を見つめ、シロさんが先陣切って現れたウサギに斬りかかった。
ドパっと、ウサギが空で破裂して赤い液体が地面に叩きつけられる。
それを隠すように次いで灰が覆う。
彼と組むのは3ヶ月ぶりなのだが、安定の素早さである。
「個人種目と同じ」
目の前に現れたウサギを突いて、固まっているダラナに言う。
私の初任務の時にジルが言っていたように。
「頼れるのは自分だけ」
彼は『基本、複数対一人』と言っていた。
それは本当のこと。
一人でウサギの討伐を任されることだってあるのだから。
あの時のリャノのように。
「殺らなければ、殺られる」
未だに固まっている彼女に私はそう言って、石突きでついたウサギを灰にした。