天を衝く槍
「ギャォギギギィ…」
一匹のウサギが私達の気配に気づいたのか、こちらを見て威嚇するように唸り声を上げる。
「グォギョィギギッ」
それに反応してウサギたちが私達を見つけ、飛びかかる。
「あんま遠く行くなよ!」
ツメで飛びかかってきたウサギの喉を掻き切ったヨースケが叫んで、私達は四方に散った。
駆ける私の脳裏になぜか、血まみれで倒れている父の姿が映りだされる。
「くっ」
それを消すように、私は鋭い爪で私の首を取ろうとするウサギに突く。
そんなウサギが私の父を殺したウサギのように、口の周りを血で赤く染めていた。
―—なんで、今更
そのウサギを灰にして、ハッと、一息ついた時。
「ウっ」
その隙をついて、ウサギが私の頭を潰そうと爪を振りかざした。
間髪で躱したものの、全てかわすことが出来ず、頬に鋭い痛みが走った。
次第に熱を持ち、熱くなっていく。
深くいってしまったのだろうか。
流れ出す自分の血液が熱い。
「ちっ」
引っ掻かれた威力は強く、私はそのままバタンと倒れそうになる体をザッと足で踏ん張り、素早く槍でそのウサギを裂く。
素早く辺りを見渡すと、いつの間にか、たくさんのウサギが私を囲むようにこちらに来ようとしていた。
ざっと見て7はいるだろう。
それから私を食らおうとしている別のウサギを両断して、寄って来るウサギに手傷を負わせる。
「ギャシャァアアッ」
それでもウサギは怯まず、ただ私を殺そうと鋭い爪を伸ばす。
私はそれを弾いて、高く跳躍して距離をとった。
あのままでは圧倒的に不利だ。
赤く染まった白い壁に靠れて、息を整える。
いつの間にか、かなり息が上がっていたようだ。
空気が乾燥しているのだろう。
息を吸うと、ノドが少し痛い。
それより、ウサギが強くなっているような気がした。
前まであんなに素早かったか?