天を衝く槍


運よく槍が深く刺さったのか、それとも私を殺すためか。


ウサギはペッと私を放り投げた。


違和感が取れてスッキリした感覚はあったものの、私は白い壁にぶち当たり、そこに新たな赤い模様を作る。


「ふ…ッ」


壁に当たった一瞬、息が止まった。


最早、何て言い表したらいいか分からない。


痛い。


いや違う。


痛いけど感覚がない。


いや違う。


左肩がなくなっているような。


力が全く入らない。


右手で体を支えて前方を見ると、私を噛んだウサギが大きな口を開けて、今まさに私を食らおうとしているところだった。


―—あ、ウサギにもノドちんこあるんだ


何故か冷静でそんなことを思った。


口臭スゴイな、とか。


その刹那。


突然、目の前のウサギが消えた。


―—え?


今さっきまで大きな口を開けて私に口の中を見せていたウサギが消えた。


「…え?」


私が驚いて茫然としていると、上からサラサラポタポタと、灰と液体が降ってくる。


「おーおー、コウガもまだまだやなぁ」


そんなおどけた声と共に。

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