天を衝く槍
10.それに気付いた筋肉バカ
それから、私の左肩の腕が完治するまで二か月かかった。
理由は簡単。
単に、効き始めるのが極度に遅い毒をもられたから。
毒をもられたっていうより、あのウサギの牙に毒がついてただけなんだけど。
私の左腕は10日と経たずにすっかり治ったが、それから一週間経った頃。
シロさんに剣を教えてもらっている最中、急にひどい頭痛が私を襲い、私はその場で気を失ってしまった。
だからその後、私がどうなったのかは分からない。
ただ覚えているのは、急激に冷たくなっていく体と喉に膨らみができて息が出来ないこと。
それと死を確信した恐怖。
ここに入った時点で死を覚悟してたけど、やっぱりなんだかんだ言って死ぬのは怖いらしい。
目が覚めたら私はベットの上で寝かされていて、あの感覚を思い出した私はカタカタと震えて涙が止まらなかった。
それがなんの涙なのかは分かんないけど。
そして、任務の途中じゃなかったのが不幸中の幸いで、一番近くにいたシロさんが適切な応急処置をしていたので私は助かった。
ここには世界最先端の医療技術があるけど、流石に手遅れになった患者は救えないし、死者を生き返らせることは出来ないらしい。
このことは、起きた私に気づいた看護師さんが教えてくれた。
因みに私はそれから1ヶ月近く眠ってたらしく、起き上がろうとすると体が言うこと聞かなくて大変だった。
更に、そのウサギの毒の影響で左腕が言うことを聞かなくなってしまった。
だけどそれも看護師さん曰く、人間だったら溶けてしまって跡形もなくなるらしい。
これはアピスから教えてもらったことらしいけど。
まぁ、そんな私の体も再びヨースケのリハビリという名の鬼特訓のおかげで2週間で元の体に戻せることができたわけだ。
そして、そんなことをしているうちに季節は秋から冬に変わりつつあった。
「……まだまだ弱いなぁ…」
枯れ葉が舞い出したのを窓の外から見て私は呟く。
そんな憂鬱になった11下旬。
私はすでに20歳になっていた。