天を衝く槍


「珍しいわね。ジューシローがこんな分かりやすい罠に掛かるなんて」


上の方からチヤクの声がした。


「……できれば今すぐにでも殺したいね」


彼女の言い方が癇に障ったのか、シロさんは鋭い殺気を放つ。


「なら先手を打たなくちゃ」


チヤクは飄々としてシロさんの殺気を気にすることもなく、楽しそうに言う。


私なんて彼の殺気で背筋が凍ったというのに。


アルでさえ、顔を真っ青にしていた。


「どうしようかしら。一人はAliceの剣豪だし、一人はすばしっこくて捕えられないし」


「!」


その刹那。


チヤクの言葉の意味を理解した私は飛び出し、目の前のウサギを斬り伏せた。


それとほぼ同時に、四方を取り囲んでいたウサギが私達を襲う。


シロさんが咄嗟にアルを守るようにして抱きしめる姿が私の目に飛び込んだ。


胸に針が刺さった気がして、私はそれを振り払うようにそれを突いて脳天を潰し、素早く次々とウサギを灰にする。


ボタボタと滴る血が私の髪についた。


そしてカンッと乾いた音が響くように石突きを地面に突き刺す。


「見くびらないでください」


キッと睨みつけてチヤクに言う。


彼女の少し驚いた表情が苛ついた。


「いくら私でもそこまで弱くありません。こんな小賢しいことをしないでください」


彼女が言っていたこと。


〝一人はAliceの剣豪だし、一人はすばしっこくて捕えられないし〟


あの言葉は要するに、この三人の中で一番弱い私を狙えということ。


遠回しにそう言っていたのだ。


「…そう」


チヤクは妖艶に微笑み、立ち去る。


「次会う時が楽しみね、コウガ」


その立ち去る際、彼女は尻目に私をギロリと睨みつけて言った。
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