天を衝く槍
「なんで助けねえの?」
ジルが不思議そうに私に聞く。
「だってあれ、カレンだよ。ジル見えないの?」
「ん~…なんか最近目が悪くなったんだよなぁ……ぼやけてよく見えねえ」
ジルはそう言って目をこする。
「……カレンって誰です?」
私はシロさんでも一目置く存在が気になった。
「ジルの愛人」
「は!!?」
シロさんがシレッと答える。
え!!?
愛人!!?
ジルの!!?
えぇ!!?
愛人!!?
「…だった人」
なに大きな声出してんの?とでも言いたげな怪訝な表情をして、私を見る。
くつくつと笑うジルがなんかムカついた。
「おい、ジューシロー。ちゃんと説明してやれよ」
ジルは何がおかしいのか、口角を上げたまま言い、シロさんに説明するよう促す。
「………………」
面倒臭そうに息を吐いて、腕を組むシロさん。
黒い瞳が私を捕らえた。
「まだ俺らが子供だった時の話」
「……子供…?」
キョトンとしてシロさんの言葉を復唱する私に、彼が頷いた。
「ジルと同姓同名の先輩がいた」
「……え、じゃぁ…」
「俺の愛人じゃねえ」
そして、アルしか見えてねぇし、と彼は付け足した。