天を衝く槍
11.変化
―—月光歴3547年4月10日
そんなことがあって、ちょうど一か月経った頃。
珍しく、ジルが焦っている姿を見た。
その日。
オフの日だったから、私は午後からいつものように図書館で読書をしていた。
夕方になって、読書の方もあともう少しで犯人が分かるというクライマックスを迎えていた時。
-----ダダダダダ
ふと、誰かが走っているような音がした。
やがてその音は大きくなっていき、図書館の入り口近くの場所で止まる。
ここには私一人しかいなかったから、野次馬のように入り口を見る人はいなかった。
「あ、コウガ」
ガチャリと、ドアを開けて入ってきたのは、少し息を切らせているジルだった。
一週間くらい前に任務に行ったから、きっとさっき帰ってきたのだろう。
Aliceの制服のままだ。
「おかえり」
「おう」
そして彼は私と目を合わせず、急いだように……いや、焦ったような表情を浮かべたまま、辺りを見渡す。
大事なものをなくしてしまったのか、何か…もしくは誰かを探しているようだ。
眉間にシワを寄せて、額には汗が薄っすら滲んでいた。
「ギル知らねえ?」
ここに私以外の人がいないと知ると、早口でそう言った。
「ギルなら、午後から目の検査だって言ってましたけど…」
私は昼ごはんを一緒に食べた時、ギルが気怠そうにそう言っていたのを思い出した。
「そうか」
彼は短くそう言い、バタバタと、まるで身を翻すようにここから出ていった。
私はいなくなった彼の背中を見る。
「………………」
…どうしたんだろ。
私はそう思いながら再び本に目を落としたのだった。
そんなことがあって、ちょうど一か月経った頃。
珍しく、ジルが焦っている姿を見た。
その日。
オフの日だったから、私は午後からいつものように図書館で読書をしていた。
夕方になって、読書の方もあともう少しで犯人が分かるというクライマックスを迎えていた時。
-----ダダダダダ
ふと、誰かが走っているような音がした。
やがてその音は大きくなっていき、図書館の入り口近くの場所で止まる。
ここには私一人しかいなかったから、野次馬のように入り口を見る人はいなかった。
「あ、コウガ」
ガチャリと、ドアを開けて入ってきたのは、少し息を切らせているジルだった。
一週間くらい前に任務に行ったから、きっとさっき帰ってきたのだろう。
Aliceの制服のままだ。
「おかえり」
「おう」
そして彼は私と目を合わせず、急いだように……いや、焦ったような表情を浮かべたまま、辺りを見渡す。
大事なものをなくしてしまったのか、何か…もしくは誰かを探しているようだ。
眉間にシワを寄せて、額には汗が薄っすら滲んでいた。
「ギル知らねえ?」
ここに私以外の人がいないと知ると、早口でそう言った。
「ギルなら、午後から目の検査だって言ってましたけど…」
私は昼ごはんを一緒に食べた時、ギルが気怠そうにそう言っていたのを思い出した。
「そうか」
彼は短くそう言い、バタバタと、まるで身を翻すようにここから出ていった。
私はいなくなった彼の背中を見る。
「………………」
…どうしたんだろ。
私はそう思いながら再び本に目を落としたのだった。