天を衝く槍
「………………………」
私はどうすればいいのか分からず、息を吐く。
「………………………」
「………………………」
「………………………」
だけど、このままじゃ。
「……なに?」
彼は、なかなか何も言わない私に声をかける。
気のせいか、優しい声音だ。
まるで迷子になっている子供に声をかける時のような。
「……ジルに何かあったんですか」
私は口をきゅっと結んで、そう言った。
「さぁ」
彼は表情を変えずに、いつものように冷たく棒読みで言い、見えない壁を作る。
それでも、彼が知っていないようには見えない。
「ほ、本当に知らないんですか…?何か知っているなら、」
「知ってどうするの」
私の言葉を遮って、シロさんがいつもより冷たい目で私を見た。
彼の黒い瞳の奥で、青がちらつく。
「それは…」
そんなことを聞かれるとは思ってなかった私は、言葉につまる。
確かに、私がそれを知ってどうこうできるわけじゃない。
ただ、アルのために―—
「…好奇心旺盛なのが悪いとは言わない」
「………………………」
彼は昔、フィーネさんが言ったような言葉を私に言う。
まるで吐き捨てるように。
「けど、迷惑」
「………………………」
そう言って、キッと睨みつけたシロさんは私に背をむける。
去っていこうとしている彼に、それでも私は叫んだ。
「アルがッ!!!」
思った通り、シロさんはピタリと足を止め、顔だけを私に向ける。
「アルが……アルが知りたいって…言っていました……」
私は唇を噛み締めながら言った。
「…………………………」
それを聞いた彼は少し眉を寄せて、困ったような、苛ついたような。
そんな感情が混じったような表情を浮かべて私を一瞥する。
「そう…」
そして彼はそれだけ言って、私をその場に残して去っていってしまった。