天を衝く槍


なんて話は、ウサギの巣に近づくにつれてしなくなった。


入り口に立ち、音を確認する。


「ヒュォオオオォオオ…」


風の音しかしない。


この前のウサギの巣では、何かと風以外の音もしていたはずなのに。


ジルも同じことを思ったのか、彼の顔にはハテナの記号がたくさん書かれていた。


中に入って数分後。


手分けして探しても、ウサギは見つからなかった。


「どうなってるんです?ここ」


ウサギの巣から出てきて早々、私は先に出ていたウルノに問いかけた。


因みにジルは、まだ中にいるようだ。


「……いや、やはり僕たちをぺしゃんこにするために、」


「現実的に考えようよ」


ぴしゃりと彼の妄想を斬ると、不意に、ふわりと嗅いだことのある匂いが鼻を掠めた。


「!」


それにはウルノも気づいたようで、私と目を合わせると、急ぐようにここから地上へ出る。


地上へ出て少し走ると、彼はザッと足を止め、上を向いた。


彼が見る方向に私も目を向けてみると、そこにはジェゾが大きく高いオブジェの上にいた。


そして、まるで待ってましたと言わんばかりにこちらを見ていた。
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