天を衝く槍
「またお前か」
「悪かったな、俺で」
ジェゾがヤレヤレというように息を吐き、ジルが私にウルノと下がれと促す。
「………………………」
まるで、遅れて登場するヒーローのようだと、私は思った。
ふと、ウルノを見ると、頭から血が出てて唇の端が切れていた。
あばらか肺か、どちらかを吹っ飛んだ時にやられたのか、彼は辛そうに息をして腹に手を置いていた。
「何の用?もしかしてまたウサギの世話?」
ジルがクスクス笑いながら言う。
「まさか。様子見に来ただけだ」
そんなジェゾの言葉に、スッと、ジルの目が鋭くなった気がした。
『……様子、ねぇ…』
彼の目がそう言っている。
「…へぇ……」
「先程のようにつまらなかったら、楽しくないだろう?」
チラリとジェゾがウルノを見た。
彼は腹に手を置いていて、目の敵のようにジェゾを睨みつけている。
「残念だったな。楽しむ余裕なんてねぇよ」
ジェゾがジルを見た。
「即座に殺すから」
「ほう?」
ピリピリと、殺気が渦巻く。
まるでチヤクとシロさんが話していた時のように。
「流石。手練れは違うな」
ジェゾはジルを馬鹿にするように鼻で笑う。
「………………………」
あ、なんかジルのこめかみに血管が…。