天を衝く槍


「う……お、オゥ…」


寝巻き姿のヨースケがウルノだったものを見て、気味が悪そうに呟いた。


「プロヴァーレか…」


「…ふ、ぅ……うぅ…」


―—どうして?


何故ウルノが?


そんな疑問が胸をいっぱいにした。


私はどうすればいいのか分からず、顔を手で覆う。


「なんで?」


「コウガ、落ち着け」


そう言って、彼は私の背中をさする。


「落ち着け」


それからギュッと私を抱きしめて、自分の心臓の音を私に聞かせようとする。


たしか、人の鼓動は人を安心させるんだっけ。


どこかで聞いたことがある。


「落ち着け」


妙に低く感じられる声が、どこか心地よかった。


背の低い人からそんなことをされるとは思ってなくて、いつも自分がしてたから、少し驚いた。


勿論これはここで思ったことではなく、後々よく思い出してから思ったことだ。


この時の私はそれどころじゃなかったから。
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