天を衝く槍


「私、寝付けない時、階段を上ったり下りたりする癖があるんです」


「は?」


「……………………」


―—どんな癖だよ


二人の顔にそう書いてあった。


「ほ、ほら、運動すれば疲れて眠くなるって言うでしょう?」


「……………………」


「……………………」


―—言うのか?


二人の顔にそう書いてあった。


「まぁ、いいや」


そこを追究しても意味ないし、とでも言いたげにシロさんが言った。


「それで、階段下りてたら血の匂いがして、その方向に行ってみたらこれ?」


彼は〝これ〟を目で示す。


シロさんが言ったことはまさにその通りで、私は大きく頷いた。


「……ヒヨコ、」


シロさんがギルをヨースケに預けて、しゃがみ、ウルノを見る。


「…はい」


一瞬、彼が何かを見つけたように眉を顰めた気がした。


「何か見た?ここに来る前に」


しゃがんだまま、彼は私の目を見て言う。


「来る前…?」


なんだろう。


思い当たる節が無い。


ここに来るまで、誰かとすれ違ったこともないし、何かを見た覚えもない。


シロさんはそんな私の様子を見て、息を吐いた。


「報告は俺がしとく。もう寝なよ」


そして私はヨースケに連れられて自室に戻るのだった。


ギルは何故かシロさんの側にいた。
< 203 / 294 >

この作品をシェア

pagetop