天を衝く槍
「私、寝付けない時、階段を上ったり下りたりする癖があるんです」
「は?」
「……………………」
―—どんな癖だよ
二人の顔にそう書いてあった。
「ほ、ほら、運動すれば疲れて眠くなるって言うでしょう?」
「……………………」
「……………………」
―—言うのか?
二人の顔にそう書いてあった。
「まぁ、いいや」
そこを追究しても意味ないし、とでも言いたげにシロさんが言った。
「それで、階段下りてたら血の匂いがして、その方向に行ってみたらこれ?」
彼は〝これ〟を目で示す。
シロさんが言ったことはまさにその通りで、私は大きく頷いた。
「……ヒヨコ、」
シロさんがギルをヨースケに預けて、しゃがみ、ウルノを見る。
「…はい」
一瞬、彼が何かを見つけたように眉を顰めた気がした。
「何か見た?ここに来る前に」
しゃがんだまま、彼は私の目を見て言う。
「来る前…?」
なんだろう。
思い当たる節が無い。
ここに来るまで、誰かとすれ違ったこともないし、何かを見た覚えもない。
シロさんはそんな私の様子を見て、息を吐いた。
「報告は俺がしとく。もう寝なよ」
そして私はヨースケに連れられて自室に戻るのだった。
ギルは何故かシロさんの側にいた。