天を衝く槍
「ねぇ、」
静かな廊下に、私たちの足音と声が響く。
「ん?」
「なんで、プロヴァーレが殺ったって分かったんですか」
私は気になっていたことを彼にぶつけた。
彼はそれを見た途端にそう言ったから。
それを聞いたヨースケは苦い顔をした。
「俺、見たことあんねんなぁ……前に」
聞くのが辛くなるほど、切ない声だった。
「毎回おんなじやから」
「え?」
ヨースケが、私を見る。
「なんでセルペンテが命張ってウサギと闘ってんのにお前逃げんねやって」
眉が下がっていた。
「まるでそう言っとるみたいに、四肢がバラバラで原型とどめてせえへん」
ヨースケが息を吐く。
「ほんま、おっそろしーなぁ……ここ」
彼が仕方なさそうに上を向いた。
『知ってました?』
ふいに、ダラナが言っていたことが頭を駆け巡る。
確か、彼女が初めて任務に出た時だ。
『世間からは〝脱出不可能な監獄〟って言われてるらしいですよ、ここ』
それを思い出して私は、漸くとんでもない場所に身を置いていることに気づいた。