天を衝く槍
「さっきの話、どう思った?」
自室に戻って、私はアルに聞いた。
彼女がベットに腰かけて、目を落とす。
「…正直……ムカつく」
「え?」
彼女がその言葉を発した途端、アルの背中から黒いオーラが湧き上がった気がした。
「今まで言わなかったってことは信用してなかったってことだろ、畜生あのバカジルが」
「…え…いや、あの……」
どうしよう。
アルの背中になんか死神が見えるんだけど。
ガイコツが大きい鎌持ってんだけど。
かなり怖いんだけど。
「なんなんだよ、あいつ…」
だけどそんな死神もアルがシュンとなると、消えてしまった。
「そんなん聞いてねぇっつの」
「…………………………」
アルも知らない、か。
私より長くここに居る彼女なら、何か知っていると思ったんだけどなぁ。
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
「…………………………」
暫く、沈黙が続いた。
「よし!!!」
「!!?」
驚いている私を置いておいて、アルは何か吹っ切れたように立ち上がった。
何故か右手に握り拳を作って。
「ごめんちょっと、ジルんとこ行って一発食らわせてくる!」
「えぇ!!?」
そして彼女は言うや否や、この部屋を飛び出して行った。