天を衝く槍
「ウサギにフツーの武器、そうだなぁ……警官が持ってる銃。あれって実際ウサギに効かないって知ってた?」
「は?」
フィーネさんの言葉に、リャノの顔に混乱の色が浮かぶ。
「それは人間の力が敵わなかったってことで、道具自体はフツーに効くんじゃなかったのかよ」
「いいや。それ、嘘だよ」
「は!!?」
これでもかと云うように目を見開くリャノ。
そんな彼を尻目に見ながらフィーネさんは、ね?というようにシロさんに目を向けた。
「剣も弓も全く歯が立たない。いくら斬り込んでも歯が毀れるだけだし、矢も刺さらない」
「……な…」
なんだその話。
淡々と言って表情を変えないシロさんに対して、リャノの顔にそう書いてあった。
シロさんがそれを言うってことは、彼はそれを実際に体験しているのだろう。
彼は自分の見て経験したことしか言わない人だ。
「だから、ウサギに耐える武器を創りださなければならなかった」
それで創りだされたのが今、私たちが使ってる各々の武器。
フィーネさんは微笑んで言った。
一体どれだけの時間と人を犠牲にして、作られたのだろう。
そう思うと、息苦しかったし、逃げ出したウルノが許せなかった。
「それに、フツーの人間じゃ一撃で殺られてしまう。そこで、学者たちは考えた。無いのならば、全て創りだしてしまえばいいのだ、と」
く、と彼は口角を上げ、武器もウサギの攻撃に耐える体も小型の端末も全て、と付け足す。
私たちの体の話は、ここに来た時にヨースケから聞いた。
あの緑色の液体が骨格を丈夫にしたり、人間離れなことも可能になる、と。
「それで、ざっと150年かけて創りだしたのが今の僕らの体」
……でも、これでもAliceはLunaに勝ててない。
シロさんだって、キールに不意打ちを食らってあんなに入院していたし…。
もしかしたら、Aliceにはもう手が残ってないのかもしれない。
だから彼らは最初に〝聖戦は僕らで終わらす〟と言ったんじゃないか。
長年Aliceが試行錯誤の上に創りだした戦士。
それが次の聖戦で負けたら―—