天を衝く槍


「それで、」


フィーネさんの声が私を現実に引き戻し、アルが言ってた事なんだけど、と言いながら彼は私を見る。


〝なぜ人体実験をしなくてはならなくなったか〟


「事態は一刻を争うからね。わざわざ動物に実験をしても、それが人間に反映されるとは限らない。だから、初めから人間を実験材料にしたんだよ」


とても効率的だろう?と、彼は馬鹿馬鹿しそうに鼻で笑った。


「家族がいる人間を実験材料にしてしまうと、後から色んな火種になる。だから家族もいない、死んでも大して関心のない、孤児を実験材料にした」


「平和になったといえども、孤児はいたからなー」


ジルが補足し、ギルが口をはさんだ。


「そしてより強くするために何度も実験を行ったんだよ」


「つか、ウサギがいなければ平和だったのにーって150年も言ってるけどさ、実際上っ面だけだろ。貧しい国が一方的に強いられて、武力行使も出来ないし」


ギルがハッと鼻で笑い、淡々と言う。


「………………………」


なんか、ギルがそんなことを知っているなんて意外だ。


なんて思ったのは私だけじゃないらしく、ヨースケもリャノもアルもギルを見ていた。


「お前ら俺を馬鹿にしすぎなんだよ」


いつものように彼が困ったように言い、何故か少し安心した。
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