天を衝く槍
16.寂寥のルーク
目を開けると、映ったのは自室の天井ではなく、見覚えのある真っ白な天井だった。


なんとなく、あまり好きではない、独特の少し妙な変わった匂いが鼻を纏まりつく。


「………………………」


……えっと…どうなったんだっけ、私。


聖戦があった。


確か、ツァンジーを倒した後、ヨースケに担がれて…。


そこで私ははっと気づく。


そうだ、ダラナは?


ダラナは今どこにいる?


「っっ」


ガバッと勢いよく体を起こしたものの、いつの間に傷を負ったのだろう。


ズキリと腹が痛んだ。


咄嗟に痛い場所を左手で覆うと、その左手もズキンと脈を打った。


「いた…」


その数の多さが自分の未熟さを表しているようで、私は彼の言うように、まだまだヒヨッコなのだと痛感する。


「…………………………」


よくよく自分の体を見てみれば、右手の甲に大きな長方形の絆創膏があり、それが対を成すように左足にもある。


左の腕に包帯がしてあり、それはまるで膨張色の白で私の太い腕をさらに太く見せているようだった。


………こんなところに怪我なんかしたっけ。


他に目立つような怪我は無く、あるとすれば、傷の浅い無数の切り傷と点滴くらいだろうか。


ただ、不思議なのは両手の指先や爪の中に血が少しついていたことだ。


まるで誰かの体を引っ掻いたような。


辺りを見渡してみると、やはりここは病院らしき場所のお世辞には広いと言えない個室のようだ。


ドアの外の音は何も聞こえないが、それがまた、私を外の世界に…ウサギを倒せと言っているようだった。


――今日は何時だろう…


左にある窓を見ると自分の顔が映った。


オデコに包帯があって、顎や頬に絆創膏とガーゼがしてあり、ガーゼがしてある方の頬じゃなく、反対の頬には打撲もある。


――こんなところに怪我なんかしたっけ


思い出そうとすれば頭が痛んだ。


さっきまで窓の外にあった太陽は風で雲を被っていた。
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