天を衝く槍


窓の外をぼんやり眺めていると、不意にドアがノックされた。


「調子どうd――」


入ってきた看護師らしき男の人は、私を見てぎょっとしたように目を開き、呆けたようにポカンと口を開ける。


まるで死んだ人が生きているのを見たかのように。


「せっセンセー!!!アルー!!!ヨースケー!!!」


そしてバタバタと廊下を走りながら彼らを大声で呼ぶのが聞こえた。


病院の廊下は走っちゃいけないんじゃないのか。


そんなことを思って半眼になる。


パタン、とドアが閉まった。


そのままゆっくり閉まったドアをぼんやり見ていると、ドアの外に人の影がさす。


「あぁ…起きたんだ」


ドアを開けた彼は上半身を起こして自分を見ている私に、無表情のままそう言った。


だけど声は優しく、私が起きたことに安心しているようだった。


…まぁ、気のせいかもしれないけど。


彼は左の隅に背中を預け、腕を組んで正面にいる私を見た。


「………………………………」


「………………………………」


それから何を話すわけでもなく、沈黙がこの部屋を包みこむ。


窓の外の音が聞こえる。


今日は少し風が強いらしく、ガサガサとビニール袋のようなものや葉の擦れる音がした。


「…コウガ」


太陽が雲から顔を出した頃、再び閉まったドアを開けたアルが泣きそうな声で私の名を口にした。


彼女は私と同じように頭に包帯を巻いたが、右目に大きなガーゼをつけていた。


左頬には小さな絆創膏が貼ってあり、あまり寝てなかったのだろうか。


目の下に青いクマが出来ていた。


「おはよう」


彼女はほっとしたように私に微笑んだ。
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