天を衝く槍


「さぁ」


少しの間をおいて、彼は「俺はヒヨコじゃないから、分からない」なんて、当たり前のことを言った。


「……ですよね…。分かるわけないですもんね」


あははと空笑いして、自嘲する。


「なんで…あんなことしたんだろ……」


ヨースケからいろいろ教えてもらったりして、喧嘩なんてしたこともなかったし、出来る立場じゃないのに。


「ヒヨコ」


シロさんが私を呼ぶ。


いつにも増して、優しい声だった。


私がこんな状態だからだろうか。


「君は喜びを表現するとき、どうするの?」


不意に彼はそう言った。


「…笑ったり……小さくガッツポーズを作ったり、ハイタッチしたり…色々です」


「悲しい時は?」


「……泣いたり、体を動かしたり…ボーっとしたり」


私はよく分からないが、彼の質問に答える。


思い出す糸口になるかもしれない。


「じゃぁ、怒ってる時は?」


「………………………………」


私はその質問に黙った。


そしてシロさんがしたかったことが分かった。


そっと彼を盗み見ると、いつもと変わらない無表情なのだが、心なしか悲しんでいるように見えた。


そして自問する。


怒ってる時、私、いつもどうしてた?


「相手に手、出してた」
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