天を衝く槍
最近よく泣くなぁ…。
そんなことを思いながら、私はその場で窓の外を見る。
さっきまであった太陽は、すでに地平線に消えていた。
「…はぁ……」
それは簡単に予測できたことで、彼の行動は割と火を見るより明らかで、前から分かっていたことなのに。
分かっていても、叶わないと分かっていても、それでも悲しかった。
私が彼を思うように、彼にそう思われるアルが羨ましい。
こんな時期に言うのなら、もっと早く言っておけばよかったのかもしれない。
それか、墓場に持っていけばよかったのかもしれない。
だけど、そんなこと出来る筈ない。
今日言わなかったとしても、私はいつか言ってしまっていただろう。
なんで、こんなタイミングで悲しいことばっか起こるんだろう。
今まで楽しんできた分の、悲しみだろうか。
私はさっき会ったシロさんの姿を思い浮かべる。
『辞めるね』
彼からたくさん学んでいたのに。
これからもたくさん剣術を学ぼうとしたのに。
手合せもたくさんして、強くなろうとしていたのに。
なんで。
彼が末期なんて。
――え?
私はそこで、思考を止める。
どうして彼が末期なんだ?
なんで私は今更そんなことに気づく?
彼がそうなるまでに、それの兆候があったはずだ。
『これが俺の普通なの』
ふとそこで、私がシロさんの食生活のことで、文句を行った時のことを思い出した。
ギルはあの時、ここ最近なんか急に痩せたと言っていた。
それに、日焼けしたみたいに、肌が少し黒くなっていることもあった。
今となれば、あれは初期症状だ。
母がなって、死んで、でも、ずっと彼女のそばにいて。
シロさんと母が同じ症状も出ていたかもしれないのに、何故気づかなかった?
一緒に任務をしていたのに何故気づかなかった?
何故、私がもっと早く気づかなかった?
私が気づくべきだったのに。
――畜生
「……ちくしょ…ぅ」